2006年10月27日 (金)
薪を使うことがエコかどうか?
◆薪を使う事がエコかどうかという質問
を時折頂きます。また、我々としても知っておかなければならない事柄だと思います。ちょっと今日はまじめに考えてみたいと思います。
・再生可能な森林から生産された薪を化石エネルギーの代替として使うのなら、化石燃料の使用を抑えたということで大いにエコ(温暖化対策)だと思います。しかし、暖房に関する根本的なエコは、冬季は室内でも1枚余分に着て人間が必要とするエネルギー総使用量を抑える事だと思います。置いてある薪は凍死しそうになるまで我慢する。薪を燃やすときにはフィリップスのハイテクオーブンで最高の燃費効率で燃やし、室内を暖めると同時に料理までしてしまう。本当の温暖化対策をしようと思うんなら徹底的に。とにかく現代人はエネルギー使いすぎです。バイオマスエネルギーに全部代替されたら森林はすぐに禿山になってしまいます。ファッション感覚のロハス生活程度じゃダメでしょう・・・
しかし、そこまでいくと、次第にエコおたくの領域に近づきます。
◆ビジネスはスピード命、金で時間を買うようなジェットセッタービジネスマンが突然エコおたくのようになったらどうでしょうか。今日から移動は自転車。タクシー乗らない。ムダなドキュメントは作らない。工場の電気は半分に節電。物流は大八車。すぐに社会生活からドロップします。とはいえ、100年前の社会はその程度のエネルギー消費だったのでは無いでしょうか。そもそも人間が活動するのに、エネルギーを使う社会の仕組みがエスカレートしてしまったのです。そのレベルは社会のそれぞれのポジションでかなり違います。現時点ではそれぞれの個人がそれぞれのレベルで、そして会社経営に影響力のある人はその影響力を使って経済活動を含む社会の仕組が温暖化ガスの排出を抑えるような方向に向かうよう協力すべきでしょう。
◆数年前に私が見かけた光景です。中学生と思しき女の子がおばあさんと一緒にスーパーのレジで支払いをしていました。その女の子はおばあさんに向かってすごい剣幕、ヒステリックな声を上げて怒り散らしていました。「ツ、ツバルって島が沈んでいるのよ!それもこれもおばあちゃんみたいなことをする人が居るからよ。無神経!バカ!そんなものもらわないで早く返しなさいよ」…様子を伺っていると、どうやら、そのおばあさんは、レジで豆腐を入れる薄いポリ袋を1枚もらおうとしたところ、その中学生の孫から、そんなものは不必要、不必要な石油製品を使うことは温暖化に直結する。あなたの世代の人間が温暖化を進めたのに、いまだに行動を改めようとしない。そのような意味の内容を、スーパー中に聴こえるような大声で「罵倒」し続けていたのです。
いつまでもレジで押し問答を続けていたので、私はその場を後にしました。しかしおそらく、その後2人はスーパーの立地から考えるとおばあさんの運転する車でガソリンを燃やしながら一緒に家に帰ったはずです。
中学生にとっては目に見えない数リットルの化石燃料を燃やしてスーパーにやってきて、わずか0.1グラム程度の石化製品という目に見えるマテリアルのために家族が喧嘩がいがみ合う、あまりにもバランスを欠いたおかしな風景でした。
中学生にとって見えているのはそのビニール袋だけであり、スーパーマーケット自体のエネルギー消費や、売られている輸入食品がそこに並ぶまでのエネルギー消費、おばあちゃんの自動車のエネルギー消費などは見えていないのです。中学生なりに温暖化を深刻に受け止めていることは判りましたが、家族同士でいがみ合う風景を見た私はこのようなバランスを欠いた言動にショックを受けました。自分がこの中学生の親だったら、どのように話をするべきだろうか・・・?
・・・確かに中学生の主張はエコの3R(reduce, reuse, recycle)のreduce=使い捨てのゴミになりそうなものは使用しないという原則通りなのですが、突然ヒステリックに孫に罵倒され、オロオロするおばあさんの姿は本当にかわいそうだと思いました。
◆大人は、エコおたくになったり、ヒステリックな言動をせずに、エコ知識を黙って勉強し、選択肢がある度にエコな手段を選択することによって温暖化対策をしなければなりません。
◆日本の薪ストーブ・暖炉のユーザーさんはお金持ちが多いです。あなたは薪ストーブのある別荘に行くときに、BMWの6気筒か、アウディクワトロの 8気筒、あるいはランドクルーザーのような巨艦で快適に移動していませんか?そんな大排気量の車持ってないよ・・・それなら普段、ちょっとしたお出かけに車で出かけていませんか。
ところで、今度の休日は、燃費1リットルあたり60mのボーイングに乗って海外旅行ですか?
マイレージをためるために出張は新幹線じゃなくて、B777に搭乗ですか?ラウンジのロハビールはウマいですよね。
それで、表題の「薪はエコか?」という質問・・・冗談でしょ。と少し厳しいことを言いたくなります。あのね、薪は昔からニュートラルです。再生可能なエネルギーですから、お天道様のエネルギーをいったん預かり、お天道様に返すだけです。中学生のビニール袋よりもニュートラルです。再生可能なエネルギーだけに頼るのが本当のエコライフというものです。一方、化石燃料を掘り出して使うということの意味は、葉緑素を持った生物が生れる前の、CO2が多く蒸し暑い大気組成に時間を逆戻りさせることです。根本的なストップ温暖化のためには、化石燃料使用をゼロにした上、過去に放出した温暖化ガスを回収して埋めなければ解決しません。軽井沢に別荘のある方は、浅間山の火山ガスにも蓋をする必要があります。別府の人も他人事ではありません。
◆自宅に薪ストーブを設置して、灯油の代わりに大事に薪を使い、たまにはストーブクッキングを楽しむあなた。本当にいい趣味だと思います。そのこと自体は地球温暖化の観点ではニュートラルな活動です。しいて説明するならば、森林の同じ面積あたりでは、広葉樹に比べてスギが炭素固定のスピードが倍近いということです。皆が樹木をエネルギーとして使ったらあっという間に森林はなくなってしまいますから。森林は継続的に維持しなければならないので、どうせ使うなら再生の早いスギをお勧めしたいということです。「薪クラブ」がスギの薪をお勧めする理由というのは他にもあるのですが、こちらを参考にしてください。
◆一つ理解していただきたい重要なことは…自然環境下では、最終的に樹木は腐朽して、菌類などによってすぐに(自然の悠久の時間から見ると一瞬で)分解されて温暖化ガスに変換されます。建材や内装材として使用された場合でも、商品のライフサイクル期間の後には廃棄され、結局は焼却か腐朽(ゆるやかな燃焼)という結果を迎えます。パーティクルボードなどにマテリアルリサイクルをしたとすれば、一時的(あなたが生きている間位)は温暖化ガスの放出を遅らせることができます。でもそのことを以って炭素固定にカウントすることはおかしいと思います。所詮、酸素を含む大気中に炭素を含む木材製品があるということは、酸素と炭素のように化合しやすい若い男女を湖畔の別荘に1週間泊まらせて、「お互いずっと何もしないでね」という期待をするようなものでしょう。
・要するに薪として人の手で燃やそうが燃やすまいが…結局温暖化ガスが放出されるので、効果は変わらないことが理解できます。どうせなら温暖化ガスが放出される化学反応と同時に放出される熱エネルギーは利用したほうがよいでしょう。
森林のCO2吸収効果などといっても、それは物事の1面だけのまがいものです。CO2吸収効果をカウントするためには、薪等のように化石燃料の代替として使用するか、エネルギーを風力・太陽光・原子力などに頼り、一方CO2タンクである原木を、大気との接点の無い場所に埋めるという作業につながっていなければ意味がありません。このようなことができてようやく森林のCO2吸収をカウントできることになります。化石燃料を地下から掘り出して燃焼させるばかりでは温暖化ガスが増える一方です。化石を地下から掘り出して燃やすばかりじゃあ均衡が取れないからこの際、思い切って人力(エネルギー源はバイオマスエネルギーです。オナラは温暖化効果が強烈なメタンを含んでいますから絶対に出さないように)で原木を担いで、化石燃料を再度作る過程を実施するということがベストでしょう。
…あなたやってくれますか?出来ないでしょう。冗談じゃないです、私もいやです。木を植えて育てるだけでも精一杯ですから、それを埋めるなんて。そんな悪夢のように不毛な作業を想像するくらいなら、むしろ現在の化石燃料使用量を抑えることのほうがよっぽど苦痛が少ないでしょう。
◆世界の石油消費量と使用目的
「現在、消費者は1日8000万バレルの石油を消費している(1バレルは159リットル)。このうち2/3が輸送用燃料として消費されている。」(日経サイエンス2006年12月号 http://www.nikkei-science.com)
アメリカでは、1人あたり日本人の2倍のエネルギーを消費しています。それなのに京都議定書に批准しないばかりか、温暖化そのものがでっち上げであるという意見のあるのがアメリカです。同じアメリカの科学誌であるサイエンティフィック・アメリカン(日本語版:日経サイエンス)に「CO2排出量を抑える最も手っ取り早く、かつ安上がりな方法はエネルギーの浪費を減らすことだ」という当然の意見を見ることができ、安心しました。
◆本質は、現在のとてつもない化石燃料の使用ペースを抑えることであり、そのポイントは自動車の使用を抑える事、その1点に尽きます。
この事がほぼ唯一の効果的な対策であることは誰でもわかっていることです。車や航空機の使用というトランスポーテーションに使う化石燃料の量は信じられないほどです。
本当は、それ以外にも産業用途の化石燃料の消費が大きいのですが、薪ストーブを使う我々個人の判断で出来ることは、移動の手段を考えるということではないでしょうか。あるいは、移動を伴わないレクリエーションの選択、移動を伴わない商談、会議の行い方が必要ではないでしょうか。(田舎に住んでいると自動車が無ければ生活できないといいます。実際にそのとおりで、生活の導線が広範囲に分散しているのが原因です。このような局面でのオルタナティブな選択は何でしょうか?車のさらなる小型化、ハイブリッド化やバイクへのシフト・バイオエタノール燃料の使用といったところでしょうか。)
結局は、原油価格がさらに高騰して、エネルギー問題がさらに深刻にならなければオルタナティブな方法の採用が進まないでしょうから、どんどん原油価格が高騰することを期待します。これは、経済人としてではなく、地球に住む動物の一員としての願いですが。
◆ちなみにフォルクスワーゲンのコンセプトカーは試作段階で、1リットルあたり100キロの燃費。
さらにちなみに、ホンダのスーパーカブの燃費が1リットルあたり150キロです。いずれも、実用燃費となると半減するようですが、カタログ数値をご紹介します。
◆私自身は、以前は完全に車通勤でしたが、ほぼ完全に鉄道へのモーダルシフトをしました。本来、人生の大切な時間をステアリングホイールを握っていつもの道をボーっと眺めながらすごすべきではないのです。鉄道利用ならi-Podを聞きながら本が読めるし、帰りにはお酒も飲めるしと、良いことづくめです。今日紹介した「日経サイエンス」だって通勤時間に読む雑誌の一部です。今度はワンセグ放送の受信機を買おうと思います。電波範囲内だったかな?
◆薪業者の中には、灯油をエネルギー源とする乾燥機で強制乾燥させているところもあります。長期間屋外にだすことでカビにやられる心配が無いことや、乾燥のための敷地を必要としないことから、商売(銭勘定)としては正しい選択かと思います。しかし我々「薪クラブ」はCO2ニュートラルな薪に灯油をぶち込むことには抵抗があります。自然乾燥、これが我々の「選択」です。これによって多少品質(見栄え)に問題が生じる危険がある、しかし、それは本質的に悪ではないので人工乾燥は採用しません。
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